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令和5年度 海外展開に向けたインフラFS 補助金
過年度採択事業者レポート
R3 エネ補助

メチルシクロヘキサン(MCH)を活用した水素サプライチェーン構築に向けての事業実施可能性調査事業三菱商事株式会社、千代田化工建設株式会社

採択事業レポート:三菱商事株式会社、千代田化工建設株式会社

1インフラ/エネルギーインフラFS事業の概要

本調査事業では、水素の製造から販売迄の全サプライチェーンを対象に、水素供給国(豪州、チリ)及び水素需要国(シンガポール)のパートナーと共に、初期的な事業モデルを構築、課題を抽出の上で事業化検証を実施。SPERA水素*1サプライチェーン事業に関する技術・経済性・法制面からの検証を重点的に行った。 *1:「SPERA 水素™」は、水素キャリアとしてのメチルシクロヘキサン(MCH)を指し、千代田化工建設(株)が独自に開発した脱水素(MCH から水素を取り出す)触媒は水素を輸送・貯蔵する SPERA 水素技術の核になる物質。

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2事業の競争優位性など、特にアピールしたい特徴

  • MCHを水素キャリアとした水素サプライチェーン実証事業を2020年に完了済。技術的な成熟度が他の水素キャリアと比して高い。
  • MCH及びトルエンを輸送・貯蔵することになるが、いずれも既に市場流通している製品であり、既存型の船舶・貯蔵設備を利用できる。
  • MCH及びトルエンは常温・常圧で液体であり、毒性も相対的に低く、化学的にも安定している為、取り扱いが容易。
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3進出先の国や地域のニーズ、抱える課題と解決施策

気候変動対策及びエネルギー安全保障の観点から、化石燃料への依存を減じることが世界各国共通の課題になるなか、再生可能エネルギーを前提とした電化により脱炭素を図ることが難しい産業・地域において特に水素導入が求められている。本事業で需要地として想定したシンガポールは、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)とする目標を明確化しているが、自国の再生可能エネルギー量が限られているところ、SPERA水素技術を用いた水素導入が同目標の実現に貢献することが期待される。

採択事業レポート:三菱商事株式会社、千代田化工建設株式会社

4インフラ/エネルギーインフラの導入により見込まれる事業の効果

採択事業レポート:三菱商事株式会社、千代田化工建設株式会社
1

3のニーズや課題に対する、事業の解決施策と効果

MCHを水素キャリアとした水素サプライチェーンを構築・水素利用を拡大することで、電力・産業セクター等からの温室効果ガス排出を抑制し気候変動対策に繋がる。またエネルギー安全保障観点からの化石燃料への依存脱却というグローバル課題の解決に貢献でき得る(現在シンガポールでは発電量の90%以上がガス火力発電由来であり、水素を導入することでエネルギー源に多様性をもたらす)。

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事業効果を示す指標などを用いた定量的な説明

既存のガス火力発電と比較した場合、MCHを利用したサプライチェーンを活用した水素発電では、Scope-1/2/3を加味したCO2量がおおよそ半分程度もしくはそれ以下になる見通し。 ※装置構成によりCO2排出量が変わる為、正確な値は各プロジェクトでの計算が必要となる。

3

FS事業実施後の事業進展や受注実績の有無

シンガポール向け水素サプライチェーンに関しては、水素購入者候補との協議を進展させつつ、一部初期的なエンジニアリング作業(Pre-FEED)を推進中。今後、より詳細な技術・商務の両面からの事業開発を行い、2024年にも最終投資意思決定を行うべく対応する予定。この他、本事業の成果を活用し、欧州向けのSPERA水素を用いた水素サプライチェーン事業にも取組中。

5本事業における今後の計画

SPERA水素を用いたシンガポール向け水素サプライチェーン案件に関して、2024年に最終投資意思決定、建設期間を経て2026年に商業運転を開始し、水素供給・販売を始める予定。
また、欧州向け水素サプライチェーン案件に関しては、2027年商業運転開始予定。

採択事業レポート:三菱商事株式会社、千代田化工建設株式会社

6事業の水平展開の可能性

  1. 産業セクターの脱炭素・カーボンニュートラルの達成は日本にとっても喫緊の課題であることから、今後大量の水素導入が本格化するに伴い、海外での実績・既存インフラを活かしつつSPERA水素を用いた日本向けの水素サプライチェーン構築に繋がることが期待される。
  2. オランダ・ドイツを初めとした欧州向けのSPERA水素を用いた水素サプライチェーン構築事業に取組中であり、本事業の成果を横展開することが可能。また、台湾でもSPERA水素を用いた水素輸入に関して検討している。

7質の高いインフラ/エネルギーインフラFS事業の補助金を活用したメリット

水素サプライチェーンを構成する各工程(水素製造、MCH製造、海上輸送、脱水素)の全体で、更なるコスト低減努力が必要であることを改めて確認できた。今後、シンガポール・欧州でSPERA水素を活用した水素サプライチェーンの事業化を進めていくが、わが国が有する先端技術たるSPERA水素を用いた国際・商業規模の水素サプライチェーンの実現、将来的な本邦への水素大量輸入、国際社会における日本政府・本邦企業の貢献度・発言力向上には、特に水素市場立ち上げ期においては、案件開発費、設備・操業コスト及び水素販売価格に対しての公的支援が不可欠であることを再認識した。

8本事業に関する問い合わせ先

三菱商事株式会社
担 当:小暮遼
連絡先:070-2254-6806
email:ryo.kogure@mitsubishicorp.com